嚥下ピラミッド
食事時間が待ち遠しくなる嚥下食の提供を目指して。
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監修・指導/金谷 節子(金谷栄養研究所 所長) 協力/栢下 淳(県立広島大学 教授)、江頭 文江(地域栄養ケアPEACH厚木 代表)
嚥下食の基礎知識
⑵ 重要性を増す嚥下食の役割
 前項で、摂食・嚥下障がいが引き起こす3つの問題として示した、①QOLの低下、②低栄養・脱水症、③誤嚥・窒息は、当事者である患者さんや高齢者に大きな苦痛をもたらすばかりでなく、病院の効率的な医療活動や経営を阻害する深刻な要因になっています。
 これらの問題の防止・改善を図る有効な手段として、最近関係者の強い関心を集めているのが、科学的な基準にもとづく適切な嚥下食の提供です。以下にそのポイントを紹介します。
①「口から食べる」ことでQOLの低下を抑制
 言うまでもなく、食事は私たち人間の命の源です。
 私たちは、日々の食事からさまざまな栄養成分を吸収し、必要なエネルギーを創造し続けるとともに、おいしさや香ばしさ、みずみずしさなどを味わうことで、「生きる喜び」を実感し、新たな気力を産み出す力にしています。
 そうした食事のもつ精神面の作用は、「口から食べる」ことによって初めて機能します。
 さらに、脳や口腔、咽頭、さらには食道、胃、大腸をはじめとする各消化器官の機能を動かすことで、人間がもつ複雑な活動を正常にバランス良く維持することができます。
 このように「人間が人間らしく生きる」うえで、「口から食べる」ことは、欠かすことのできない大切な条件と言えます。
 したがって、摂食・嚥下機能の低下した高齢者の方々にとっては、残されている「口から食べる」能力を使って栄養摂取を図りながら、機能回復のためのリハビリテーションへと導く嚥下食は、QOLの低下を防ぎ、生きる喜びと意欲をもたらす重要な働きをもつものなのです。
② 低栄養の予防・改善に貢献
 わが国では、病院に入院したり、介護施設に入居している高齢者の約40%が、低栄養状態であるといわれており、その大きな原因の1つとして摂食・嚥下障がいが挙げられています。
  • ◉ 低栄養に陥る主な原因
  •  摂食・嚥下機能の低下により、十分な食事がとれない。
  •  認知症やうつ病などの影響で食べる意欲が低下。
  •  身体上の障がいがあり、食事をとりにくい。
  •  食事内容に対する誤った認識や極端なこだわり。
  •  間食のとり過ぎ。
 低栄養は、以下のようなさまざまな問題と深い関わりをもつことから、適切な嚥下食の提供をはじめ、経腸栄養剤や輸液の使用など、医師や本人・家族と相談しながらさまざまな対策を講じる必要があります。
  • ◉ 低栄養に伴う主な問題
  •  免疫が低下し感染症などの病気にかかりやすい。
  •  病気になると回復しにくい。
  •  褥創ができやすく治りにくい。
  •  ADLが低下する。
  •  QOLが低下する。
③ 誤嚥事故を防止
誤嚥の構造図
誤嚥の構造図
 誤嚥とは、食道に入るべき食べ物や唾液が気道に入ってしまう状態を意味し、誤嚥物に付着した菌によって肺炎を発症するなど、深刻なリスクにつながります。
 健常者の場合は、気道に食べ物などが入るとむせを起こし、咳とともに戻すことができます。
 ところが、嚥下機能が低下した人の多くが、むせる力すなわち吐き出す力が弱いため、食べ物や唾液が気管や肺の中まで入ってしまう危険性が高く、窒息を引き起こす場合もあります。
 後期高齢者の増加に伴って、誤嚥事故も増加の傾向にあることから、摂食・嚥下機能の正確な診断・評価の方法と対応する食事の形態や物性に関する基準の確立が強く求められています。

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