いま、なぜ嚥下食が必要なのか11.嚥下食調理に便利な調理機器

1)ミキサーの種類と特徴

 介護食や嚥下食を調理する際にはミキサーを使用しますが、ミキサーにもいろいろな種類があり、それぞれの特徴を理解して、上手に使い分けることが必要です。

① ミキサー

いわゆる一般のミキサー。なめらかなポタージュやペーストを作ることが可能。ただし、ミキサーの容量に対して、ある程度の水分や容量がないとミキサーが回らない。(少量を作ることは難しい)

② フードプロセッサー

食材を細かくしたり、ミンチにしたりすることができる。水分がなくても作動するが、完全なペーストにするのは難しい。

③ ブリクサー

すり鉢すりこぎをイメージして開発された嚥下食に特化した製品。従来のフードプロセッサーと異なり、水分が少なくてもペースト状に処理することができる。

④ ミルサー

通常は、茶葉を粉末にしたり、煮干を粉にしたりするための器具。少量を調整するには向いているが、水分が多いと粗い仕上がりになったり、固形物が残ったりする場合があるので、出来上がりを確認チェックする必要がある。

⑤ ハンドミキサー(バーミックス)

一人分や二人分を作るのに適している。少量でもミキサーにかけることができ、アタッチメントを変えることで数種類のミキサー機能を果たすことができるので、家庭用向き。

⑥ 業務用ミキサー

容量や食数にわけて選択する。一般家庭用よりパワーがあるため、壊れにくく、撹拌・粉砕能力が高いのが特徴。熱に強いタイプもある。

⑦ パコジェット

食品を一度凍結させてから処理するので、従来のミキサーよりなめらかな状態を望める。また、冷凍保存できるので食材の風味を保持でき、衛生管理もしやすい製品。

 どのような仕上がりにしたいか、何食分の調理をする必要があるか、施設での調理状況をふまえて、機器を選択するとよいでしょう。
また、食中毒防止、安全のために、清潔に扱うことが大前提となります。汚れが残りやすいので、洗浄のしやすさ、煮沸消毒ができる、器具が分解できる、などの点も考慮することをお奨めします。

2)その他の調理機器

 介護食や嚥下食を調理する際にはミキサーを使用しますが、ミキサーにもいろいろな種類があり、それぞれの特徴を理解して、上手に使い分けることが必要です。

① IH調理器

IH調理器

IHは、加熱コイルに電流を流し磁力線を発生させることで鍋そのものを発熱させるため、熱効率が80%〜90%と高く強力な加熱パワーを発揮する。そのため、立ち上がりが早いうえ、火を使わないので安全性も高いのが特徴。また、直火を使うガスコンロと比べて放射熱が少なく快適な厨房環境を維持しやすいうえ、フラットなトッププレートはサッと拭くだけできれいになり、作業台としても活用できる。

② スチームコンベクションオーブン

スチームコンベクションオーブン

煮る・焼く・蒸す・揚げるなどさまざまな調理をモードと温度・時間を設定することで1台でこなす多機能調理器。特に、蒸気(スチーム)を利用することで、ジューシーでやわらかに仕上げることができるのが特徴。また、電気式の場合はオーバーナイトクッキングなどにも利用できるなど、上手に活用すれば調理の幅を広げるとともに効率化が図れるため、業態を問わず導入が進んでいる。

③ ブラストチラー

ブラストチラー

スチームコンベクションオーブンなどで1次加熱した食材を急速冷却する際に使用する機器。病原菌や細菌の活動が活発化する危険な温度帯を素早く通過させることで、食材を安全な状態で保存することが可能となる。新調理システムを導入した安全で効率的な食事提供を行う際には必要不可欠な機器である。真空調理の場合、氷水チラーや冷水チラーなどで代用することもできる。

④ 湯煎機

湯煎機

真空調理を行う際に使用する機器。設定した温度に保たれたお湯の中に、真空包装した食材を入れて加熱する。食材ごとに最適な温度を設定することで、安全でおいしい状態に仕上げることができる。スチームコンベクションオーブンでも代用が可能。

⑤ 真空包装機

真空包装機

真空調理には必要不可欠な機器。食材を真空用の袋に入れて空気を抜き密閉することで、衛生的かつ鮮度を保った状態で長期間保存できる。また、調味液などを食材と一緒に真空パックすると、食材に均一に浸透させることができる、食材本来の旨味や風味を外に逃がさないなどの効果がある。