「第11回嚥下食メニューコンテスト」決勝審査会を実施しました。
この度、「一般社団法人日本医療福祉セントラルキッチン協会」との共催により、「~地域の伝統食からオードブル・デザートまで~第11回『嚥下食メニューコンテスト』」を実施しました。
今回は、医療・福祉施設の関係者だけでなく、地域の高齢者に食事を提供する団体や外食企業、さらには学生に至るまで、幅広い企業、法人、団体からバラエティに富んだメニューの応募があり、嚥下食・介護食の着実な認知拡大とそれらへの期待やニーズの高まり・広がりを感じる結果となりました。そのため、上位にランクインした作品のハイレベルな調理技術や斬新なアイデアと工夫、見た目と美味しさへのこだわりを秀逸かつ多彩なアプローチによって実現させた完成度の高い料理は、一次審査での評価と決勝審査に進出する5作品への絞り込みを難航させました。
決勝審査会は、2024年2月21日(木)「メディケアフーズ展2024」内のセミナー第2会場で実施。「メディケアフーズ展2024」の会場内は、昨年に比べて来場者数も増えて賑わいを取り戻し、決勝審査会のスタートから調理審査までを第一部、記念セミナーから表彰式までを第二部として事前申込制としたところ、多くの方からの観覧申込があり、決勝審査会の会場内は終始活気に溢れていました。
主催者代表挨拶
審査会風景
まず、主催者を代表して一般社団法人日本医療福祉セントラルキッチン協会の久保理事が代表挨拶を行い、審査会がスタート。決勝審査会にノミネートされた5チームが、ステージにセットされたIH調理器やスチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、ミキサー類などを使って20分間の実演プレゼンテーションを行い、完成した料理を金谷・柴本・片岡の3名の審査員が試食・採点する方法で進められました。
1組目は、博多湾や玄界灘で獲れた新鮮な刺身やネタを振る舞う「刺身・握り寿司『博多前』」の調理を特設ステージで披露いただきました。途中、調理作業をモニターで中継しながら、金谷氏から各チームの作品と決勝審査進出のポイントを解説。続いてメニュー開発の経緯や特徴、調理のポイント等のインタビューを行いました。
桜十字福岡病院
松尾 頼氏・伊藤 大将氏
刺身・握り寿司「博多前」
調理審査風景
調理審査風景
続いて、2組目は駆除する蝦夷鹿肉の高い栄養価に着目したジビエ料理の嚥下食「蝦夷鹿のムースと北海道産男爵芋のピューレ ケセラ仕立て」でした。丁寧な下処理によってジビエ料理独特のクセを解消し、蝦夷鹿肉の大きな可能性を見いだした料理は、高級フレンチのようなたたずまいで、「室蘭を嚥下食の街にする!!」とのキャッチコピーのもと地域一帯となったチームの活動も紹介されました。
ケセラネットワーク
音喜多 哲郎氏・佐々木 聡氏
蝦夷鹿のムースと北海道産男爵芋のピューレケセラ仕立て
調理審査風景
調理審査風景
3組目は、創業50年の名店が誕生日や記念日、結婚式などの特別な日に、摂食嚥下困難者にも美味しく召し上がっていただきたいという想いで、5年の月日をかけて開発した料理「口福膳」を披露してくださいました。板前料理の技術を駆使した宝石箱のような美しい彩りに驚かされると共に、冷凍しても変わらない物性と味覚を保持した嚥下食として、新たな可能性を見いだされる貴重な機会となりました。
日本料理かんさい
猿橋 央志氏・小島 健一氏
口福膳(嚥下食メニューコンテストSPバージョン)
調理審査風景
調理審査風景
4組目は、とろみが必要な方にもお酒を楽しんでいただける機会が増えてきたことに対し、お酒の「あて」や「つまみ」として楽しんでいただけるようにと開発された「お酒のあては、さざえのつぼ焼きといかの塩辛」でした。湘南の海で獲れる食材を使った一品は、抗酸化ビタミンやタウリン、ミネラルなどの栄養面と、食感や舌触り、香りといった「食」の魅力を引き出す技術の両面から、嚥下食として多様な要素を満たした完成度の高い一品となりました。
社会福祉法人慶寿会 松林ケアセンター
清水 宏美氏・高橋 香織氏
お酒のあては、さざえのつぼ焼きといかの塩辛
調理審査風景
調理審査風景
最後に、愛媛特産の「伊予牛」を使用したステーキと愛媛の地鶏「松山鶏」を使ってフォアグラとコラボしたメニュー「和牛の寒天ステーキとフォアグラ風ムースの五感で楽しむロッシーニスタイル」が調理審査に臨みました。食べることをどなたでもどのような状態の方でも安全に楽しんでいただけるようにと開発された一品で、1枚のお皿に美しく盛付けられた料理は、嚥下食とは思えない圧巻の出来栄えでした。
医療法人 ゆうの森
西村 健太郎氏・越智 みづき氏
和牛の寒天ステーキとフォアグラ風ムースの五感で楽しむロッシーニスタイル
調理審査風景
調理審査風景
観覧者の皆さまは、金谷審査員長の解説や出場者のプレゼンテーションに耳を傾けながら、各出場者が披露する巧妙なテクニックやアイデア満載の調理手法に驚き興味をもたれた様子で、各出場者の調理審査の合間には、展示された嚥下食メニューの写真を撮るなど、完成度の高い美しく美味しそうな嚥下食メニューに心を奪われていらっしゃいました。
調理審査を終えた3名の審査員は、別室に移動してそれぞれの専門的立場からの評点を中心に協議を行い、グランプリ・準グランプリ・優秀賞の選考に取り組まれ、書類審査での評価点と決勝審査会での内容を踏まえた総合的な観点から、各賞を選定されました。
審査時間を利用して、会場では昨年度最優秀グランプリを受賞された元有限会社月翔 嚥下食工房七日屋 所長の牟田園満佐子氏による記念セミナー「食べるよろこびを いつまでも~しあわせごはんⓇ そのひと口が宝物~」を実施。牟田園氏が嚥下食に取り組むきっかけから、七日屋での歩み、さらには原材料や機器・器具へのこだわりまでを、ご自身の経験をもとに分かり易く紹介してくださいました。嚥下食づくりへの真摯な取り組みと喫食者への想いを込めた講師のあたたかいお話しに、聴講者の皆さまは、時折頷きながら熱心に耳を傾けていらっしゃいました。
牟田園 満佐子氏
記念セミナー聴講風景
最後に、審査結果発表と表彰式が行われ、最優秀グランプリに輝いた医療法人 ゆうの森の西村 健太郎氏を筆頭に、表彰状と楯・賞金が手渡された後、片岡氏、柴本氏、金谷氏の順に講評が行われ、決勝審査会はつつがなく終了しました。
審査結果発表
最優秀グランプリ発表
表彰状授与
表彰楯授与
賞金授与
片岡護氏講評
柴本勇氏講評
金谷節子氏講評
最優秀グランプリ
医療法人 ゆうの森 様
最優秀グランプリ受賞インタビュー
準グランプリ
日本料理かんさい 様
集合写真
厨房ステージ(IH調理器)
厨房ステージ(冷却・加熱機器)
厨房ステージ(シンク&加熱・冷却機器)
厨房ステージ(ミキサー類)
表彰楯&目録
会場風景
今回は、最優秀ブランプリを獲得したメニューをはじめ、地域の食材や特産品を活用しながら、おいしさへのこだわりや多様な食べ手への想いと配慮がつまったメニューが軒を連ね、嚥下食の幅広い可能性と期待感の高まりを感じられる貴重な機会となりました。
最後に、当コンテストに応募くださった多くの皆さま、運営をサポートしてくださったスタッフの方々、さらには協賛・協力・後援いただきました各企業さま等、関係各位に心から感謝を申し上げ、ご報告とさせていただきます。
■審査結果
<最優秀グランプリ>
「和牛の寒天ステーキとフォアグラ風ムースの五感で楽しむロッシーニスタイル」
医療法人 ゆうの森
西村 健太郎氏
<準グランプリ>
「口福膳(嚥下食メニューコンテストSPバージョン)」
日本料理かんさい
猿橋 央志 氏
<優秀賞>
「刺身・握り寿司「博多前」」
桜十字福岡病院
松尾 頼氏
<優秀賞>
「蝦夷鹿のムースと北海道産男爵芋のピューレ ケセラ仕立て」
ケセラネットワーク
音喜多 哲郎 氏・佐々木 聡 氏・川畑 盟子 氏
<優秀賞>
「お酒のあては、さざえのつぼ焼きといかの塩辛」
社会福祉法人慶寿会 松林ケアセンター
清水 宏美 氏